ケガの予防やパフォーマンス向上のために行われているウォーミングアップはそれぞれの競技で独自のものが行われている必要があり、その動きを見ることは非常に勉強になります。
例えばバレーボールは繰り返しのジャンプや横への深い踏み込みが求められるので、膝のケガや腰痛が必然的に増えてきます。特に女性の場合は男性と比較すると、筋力的にも少なく、骨格的にも骨盤が広いため、膝や腰に起きる怪我のリスクは高いです。
そんな女子バレーボール界では、どのようにして怪我のリスクを減らしているのでしょうか。
2014年に行われたバレーボールのワールドグランプリ女子日本代表チームのウォーミングアップ映像を例に、どんなウォーミングアップをしていくのが有効なのかを探ってみたいと思います。
今回の動画はこちら。
バレーボールに求められる能力
バレーボールはジャンプばかりに目がいきがちですが、基本は中腰姿勢で前後左右に素早く動くことが求められます。その中でジャンプしてスパイクを打ったりブロックをするわけです。
そのため、股関節周りや足首周りの柔軟性が求められます。
また、素早いジャンプをするためには地面にまっすぐ力を伝えられるように正しいアライメント(特に膝と足首の方向性)にしておく方が良いですし、空中姿勢を保つためにも体幹部のインナーを働かせる練習が必要になってきます。
もしアライメントが崩れてしまうと、想定していない怪我を引き起こしてしまうからです。
バレーボールでよく起きるケガは、
①膝のケガ(ジャンパー膝、前十字靭帯損傷)
②腰痛(ヘルニア、腰椎分離症、ギックリ腰)
③肩関節障害(インピンジメント症候群、ルーズショルダー)
などが挙げられます。
前十字靭帯の断裂はアライメント異常の結果引き起こしてしまう典型的な例で、ジャンパー膝やヘルニアなどの慢性障害も崩れたアライメントで負荷がかかり続けた結果と言わざるをえません。
ウォーミングアップに含める要素
では、女子バレーボールのウォーミングアップにはどんな要素が含まれていれば良いのでしょうか?ただ身体が温まれば良いものなのでしょうか?
ウォーミングアップの目的は言うまでもなく、練習や試合に向けて心も身体も準備することです。
身体の準備とは、怪我を予防し、パフォーマンスを向上させるための準備ということ。ただ身体を温めるだけでは怪我の予防にもパフォーマンス向上にもつながりません。
ウォーミングアップの効果は簡単にまとめると、以下のとおりです。
①筋温の上昇
②酸素の利用効率が高まる
③関節可動域の向上
④筋出力の向上
これまでの研究で、筋温が38℃以上になると各関節に分泌される滑液の分泌量が増え、関節の可動域向上や酸素の利用効率が高まることがわかっています。ただしこれには条件があって、15分ほどかけて38℃以上になる必要があります。
よくウォーミングアップは15分以上やりましょうと言われますが、それにはしっかりとした理由があったのです。
身体的な面だけでなく心理的な面でも大きな効果があります。集中力を高めることで脳からの指令が届きやすくなりますし、練習や試合でのイメージを描くこともできます。自分との対話の時間としても最適といえます。
バレーボールのウォーミングアップ
今回の動画を見ていくと、股関節周りや足関節周りを中心にしたダイナミックストレッチで構成されているのがわかると思います。
股関節をしっかりと動かせるだけでなく、素早いジャンプ動作のための上半身の使い方や瞬発的な力の伝達を可能にする足関節周りなども意識することですぐに試合にうつれるように組み立てられています。
トレーニング要素を取り入れることで、心拍数も上がりますし筋力発揮に最適な体内環境を作り上げています。ウォーミングアップというとしっかりとストレッチをして、ブラジル体操のように動いて、、というイメージがあるかもしれませんが実際にはこれくらい息を上げておいた方が望ましいです。
これだけでしっかりと汗をかくこともできますし、息も上がります。
しっかりとした状態で試合に臨んでいいパフォーマンスを発揮するためにも、いいウォーミングアップはしていきたいですね。